2013-03-30

椅子に浅く腰掛けて、太腿の力だけで紙コップを支えている。
わたしの腿と腿のあいだに挟まれた紙コップにはなみなみと淹れたての熱いコーヒーが注がれており、ちょっとでも力を緩めようものならたちまち紙コップが落下して、わたしの足下のいる猫のミャ夫(♂ 2歳 )に大やけどを負わせてしまうことは必定。「一刻も早くこの場から立ち去って! さもなくばあなた大変な目に合っちゃうんだよ!」そんな叫びもむなしく、ミャ夫はわたしの足にまとわりついて一向に離れていく気配がない。それもこれも、ミャ夫の気を惹くため、わたしが自分で自分の足にマタタビを塗布してしまったのがいけなかったのだ。まさかこんな状況になるなんて誰に予測できただろう。こんなことになると分かっていればマタタビなんて塗らなかったのに…。
ミャ夫はわたしの足に頭や鼻先を執拗にこすりつりつけては、ウットリとした表情を浮かべだらしなく涎を垂らしていたのだけれど、つい先ほどから何を思ったのか、わたしの足に猛烈なタックルをぶちかましてくるようになった。馬鹿かこいつは! そんなことしたら振動でコーヒーがこぼれちゃうっつーの。
「ミャ夫こらやめなさい!」
完全にトリップしているミャ夫にわたしの言葉が通じるはずもなく、繰り返されるタックルになす術もない。そして衝撃に耐えようとするあまり、太腿に込める力がつい強くなりがちに。力を入れすぎると紙コップは当然へこむから、中身が溢れ出てしまう危険性が高まる。たぷんたぷんのコーヒーは今にも氾濫しそうな勢いでコップの縁を打っている。
その黒々とした液体からは白い湯気が立ち昇っていて、まだ当分は口をつけられそうにない雰囲気。わたし猫舌なのでこういうのかなり冷まさないと飲めないタイプなんですよね。