2012-12-28

たこ焼きパーティ、通称たこパー。思い思いの具材を、美味そう不味そうといった味覚的な基準ではなく、多分に博打的な、適当なチョイスで、つまり、不味そうだけど面白いから入れてみようとかそんな曖昧極まりない判断で、各自が好き勝手に放り込んでいく。なので正確にはたこ焼きとは言い難いものも、焼きあがってみれば、かなり沢山、こんなに食えないよなぁ、というほどあるのも事実。でも、そんな細かいことは気にしない。

唐突に、向かいに座っている人物が、私に向かって、今夜は大いに食い飲みしましょう!と言ってきたので、私は一瞬ではその人が何を言っているのかが理解できず、ポカンとしてしまったのだが、それからすぐに、飲み食いですよね?とその人の言葉を訂正してみた。しかし、飲み食いじゃないです、食い飲みです!と尚もその人は言う。

「でも普通、こういう場合は飲み食いをする、と言いませんか」

「飲み食いと言うと、たとえば、ここにあるビールを飲む、それからたこ焼きを食べる、という順序になってしまうので、それだと正確さに欠けるのです」

「では、どうすればいいのです」

「まず、たこ焼きを口にいれる、そして口内のたこの繊維もまだ噛み切らぬ内に、唇にソースや青海苔が付着しているのにも構わず、おもむろに、迅速に、手元の、グラスのビールを傾ける、つまり食い、飲む、という二連コンボです。この順序こそが正しいのであって、飲んでそして食う、という流れは邪道なのです」

「なるほど。よくわかりました。では、これはどうですか」と言ってたこ焼きをパクリ、もうひとつパクリ。

「それは食い食いです」

答えを待って、ビールをゴクリ、ゴクリ。

「飲み飲みです」

パクリ、パクリ、ゴクリ、パクリ。ゴクリゴクリ。パクリ。

「食い食い飲み食い飲み飲み食い、です」

再び、ビールをゴクリ。たこ焼きをパクリ。そして箸をくるくる。

「飲み食い廻し、です」

箸を手刀でバキッ!

「折り、です」

折れた箸でたこ焼きをパクリ。

「折り食い、です」

折れた箸をさらに手刀でバキッ!
ビールグラスを前歯でガリッ!

「折り折り砕き、です」

グラスの破片で口中血だらけ。
その血をソースにたこ焼きをパクリ。

「血ソース食い、です」

それはそのまま過ぎじゃないか?と思いつつ、ビールをゴクリ。唇の上が泡だらけ。

「髭、です」

そろそろ苦しくなってきたか?
ならばこれでどうだ。
テーブルを、ありったけの力を込めてガシャーン!!床に散乱したたこ焼きをパクリ。

「荒らし食い、です」

窓ガラスをバリーン!電球をバリーン!たこ焼きをパクリ。ビールを口に含んでピュー。

「割り割り食い吹き、です」

折れた箸の尖った先端部分を自分の腕にグサリ!ビール瓶で相手の頭をガツーン!電子レンジを持ち上げてバコーン!高級そうなカーテンをビリビリ!障子も屈託なくビリビリ! 思いきり助走をつけて冷蔵庫にドカーン! 足の裏にたこ焼きがベチャリ。もったいないので勿論パクリ。

「刺し殴り壊し破り破り蹴り踏み食い、です」

ビールを一気にゴクリゴクリゴクリゴクリ。

「飲み飲み飲み飲み、です」

げふっ、とゲップをする。

「それは、失礼です」