セックス・チェック 第二の性

セックス・チェック 第二の性 [DVD]

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とてもじゃないが正気とは思えない。端的に言って狂った映画だと思う。

友人の奥さんを犯した緒方拳はひろ子という女と出会う。緒方拳が演じる男は、かつては名スプリンターだったが、今ではホステスのヒモで、本人いわく「俺はオオカミ」。ひろ子は山下電機という会社で働く女性工員で、緒方拳にその男勝りな気性としなやかな肢体(デカい尻とか)を気に入られ、やがて2人はオリンピックの100走出場を目指してトレーニングを開始する。緒方拳は、ひろ子に女性の100走の限界とされている、11秒というタイムを切らせようと、彼女を男に仕立て上げることにする。まず、カミソリで顔を剃れと命じる。そうすればヒゲが濃くなって男に近付くのだと。それから言葉遣いも男言葉に強制させる。一人称は「私」ではなく「俺」。コンディションを管理するために、一日三度食事は何を摂ったか、ウンコは何回したか、チェックシートに記入させる。それらを律儀に守るひろ子。コーチである緒方拳の期待にこたえるために、ゲロを吐きながら過酷なトレーニングに耐えるひろ子。ケモノである緒方拳同様、彼女もまた人間には見えない。人間として描かれていない。

走るマシーンと化したひろ子は、オリンピック出場が夢ではないところまでたどり着く。しかし、あまりのスピードに「コイツ本当に女か?」という疑問が浮上。そこでタイトルにもなっている「セックス・チェック」、つまり性別診断が行われることになるのだが、ここで発覚する事実というのがトンデモナイ。実は、ひろ子はふたなりだったのだ!映画の中で「ふたなり」という言葉を聞いたのはコレが初めてのような気がする。ふたなりではオリンピックには出られない・・・。真実を知った緒方拳は、これまでのやり方(男にしようとしたこと)が間違いだったと気付く。そして「今度はあいつを女にしてやる!」と決意。ひろ子を毎晩のように抱く。昼間はこれまで通り厳しいトレーニングをし、夜は夜で別のスポーツを頑張る。昼間のトレーニングのシーンから、いきなり裸で体を動かす夜のシーンへとつながるモンタージュ。こうしてスポーツとセックスが編集によって並べられることで、何かこうすごく深遠なものを見ている気分にさせられるから不思議だ。ハッキリ言ってこんなベッド・シーンは見たことがない!

やがて、毎晩のトレーニングが功を奏したのか、ついにひろ子は女となる。そして再びセックス・チェックをしてもらうために、2人は緒方拳の友人の医者(映画の冒頭で緒方拳に奥さんを犯された気の毒な人)の自宅を訪れる。というか、断りもなく強引に家に上がりこむ。そして、「お前にはもう会いたくない。診断もしない」と当然の反応をする医者に、緒方拳は「だったら俺がこの場で(ひろ子が女であるということを)証明してやる!」と叫び、人様の家の応接間で全裸になり、そこでひろ子を抱く。当然目をそむける医者。すると、「なぜ見ないんだ!ちゃんと見ろ!」と緒方拳はむちゃくちゃなことを言い出し、さすがにこれには折れた医者は、セックス・チェックをおこなう。診断の結果、ひろ子は間違いなく女であると証明される。そして、ついにオリンピック予選の日がやってくる・・・。

この映画のラストには、ほんとうに胸打たれた(本当です)。現代から見れば、相当にむちゃくちゃなストーリーかもしれない。しかし、それを「ありえない」とは思わせない、問答無用のリアルがこの映画にはある。そのリアルの正体は何なんだろう、ということです。

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