2013-08-30

CERNLHCと聞くと、どうしてもシュタインズゲートを連想してしまう。というか、僕はシュタインズゲートをやるまでCERNLHCも知らなかったので、入り方がそもそもズレているのかなんなのか、その手のノンフィクション的な入門書を読んでも、そこに書かれてある事柄を、半分フィクションの方に引っ張られて読んでしまっているような感じがする。
「宇宙はこう考えられている」を読み始めたときも、CERNという単語が出てくる度に、落ち着かない気持ちに。
それはともかく、これはとても面白い内容であった。まあ知っている人には何を今更という感じなのかもしれないが……。


物理学の最終目標は「あらゆるものを統一すること」で、この宇宙のあらゆることをたったひとつの理論によって証明する「統一理論」の完成を目指している。

これが非常に格好良い。と同時に相当無茶苦茶な、中二病的こだわりのようにも思える。


原子核は陽子と中性子からなる。
その周りを、電子が回っている。
陽子や中性子はさらに小さな粒子に分けられる。
物質を構成しているのは12種類の素粒子。厳密にはアップクォークダウンクォーク、電子の三種類。身の回りの物質はこれだけで出来ている。
宇宙には物質が存在するだけでなく、物質同士に働く力があり、常に変化している。
自然界に働く力は全部で四つだけ。その四つも元をただせば一つの力だった。

全ては一つの力から派生した、ということらしい。このシンプルさを指向する美学みたいなものは何なのか。やはり中二病なのか。


重力。特徴は近くにあるもの同士だけではなくとても遠くにあるもの同士の間にも働くということ。そしてとても弱い。
電磁気力。電気と磁気。
強い力。原子核の中で陽子と中性子を結びつけている力。陽子同士をくっつけ、クォーク同士をくっつけている力。
弱い力。放射性物質ベータ崩壊するときに働いている力。ベータ崩壊とは中性子ニュートリノと電子を放出し陽子に変化する現象。そのときに働いているのが弱い力。
強い力はクォークだけに働く。弱い力は六種類のクォークと六種類のレプトン(電子の仲間)のすべての素粒子に働く。


強い力>電磁気力>弱い力>重力


中でも重力は弱い。どのくらい弱いかというと、地面に置いた釘が磁石で簡単に持ち上げられてしまうくらい。つまり、重力より磁力の方が強い。

実感として重力がそんなに弱いという印象はなかったのだが、言われてみると確かにそうなのかもしれない。こういう視点はなかったので新鮮ではある。


これら四つの力は力を伝達する素粒子をやり取りすることによって生じる。
電磁気力を伝える素粒子は光子。
重力は重力子
強い力はグルーオン
弱い力はウィークボソン
このうち、重力子はまだ発見されていない。

発見されていないのか!


「標準理論」物質を構成する素粒子素粒子同士の間に働く力、さらにその力を伝達する素粒子によって、素粒子の振る舞いや現象を説明する理論。
重力は含まれていない。

標準理論という名称がまた中二心をくすぐる。


ヒッグス粒子。万物に質量を与えた素粒子
素粒子には質量を持つものと持たないものとがある。
ビッグバン時、すべての粒子は光速で飛び回っていた。光速で飛び回るものに質量はない。質量があると重さでブレーキがかかるため。
つまり宇宙誕生時には素粒子には質量がなかった。と標準理論では考える。
しかし現実の素粒子には質量がある。そこでヒッグス粒子が出てくる。
「本当は質量がないのに、ヒッグス粒子があるために素粒子に質量が生じている」のだ。
宇宙誕生の直後、不思議な現象が起きて素粒子が質量を持つようになった。
その現象を「対称性の自発的破れ」という。
例え。丸テーブルに座る人々の間に紙ナプキンがある。誰もが右か左かどちらの紙ナプキンをとっても良い状態。これを対称性があるという。しかしある一人が左の紙ナプキンを取り、その隣の人も左をとって……と全員が左の紙ナプキンをとるようになると、これはそれまでの偏りのなさが破れたことを意味する。つまり対称性の破れだ。
誕生時の宇宙には対称性があり真空にヒッグス場が存在していた。しかしその値はゼロで素粒子に質量を与えるものではなかった。その後宇宙が冷えていくと対称性の自発的破れが起き、ヒッグス場の値がゼロでなくなり、素粒子と作用し合うようになり、素粒子が質量を持つようになった。

こういう発想が何処からくるのか、凄いを通り越して殆ど唖然としてしまう。


現在宇宙は137億歳。
宇宙の四分の三は暗黒エネルギーで、残り四分の一は暗黒物質で満たされている。
私たちの知る普通の物質は、この宇宙の僅か四パーセントにすぎない。

暗黒エネルギーとか暗黒物質とか胡散臭すぎて素晴らしい。


太陽系では惑星の公転速度は太陽から遠ざかるにつれて遅くなる。火星は687日。冥王星は247年。
これは太陽の重力に引っ張られて太陽に近付くほど公転速度が速くなるため。
地球から250万光年の距離にあるアンドロメダ銀河は渦巻き型をしており、星々や星々の間にあるガスは銀河の真ん中を中心としてその周りを回転している。
太陽系の例を考えれば、銀河の質量の殆どは銀河中心に集中していて中心から遠ざかるほど回転の速度は遅くなるはずだが、観測結果はそれを裏切るものだった。
つまり中心から離れても星の回転速度は遅くはならなかった。
このことから、星がまばらに見える銀河の周辺にも同じように質量が存在していると考えられる。
銀河の中に目に見えない物質がありその重力が銀河が飛び散らないようにつなぎとめている。これが暗黒物質。しかしその正体は今はまだ皆目検討がつかない。
最有力候補として考えられているのは超対称性粒子。
対称性粒子は標準理論を超える超対称性理論の中でその存在が予言されている素粒子
対称性理論によれば、標準理論における素粒子にはそれぞれペアを組む相棒として超対称性粒子が存在する。となる。
どんな物質もすり抜ける重くて遅い粒子。暗黒物質の条件を満たす粒子。
しかし存在は確認されていない。
CERN加速器によって、陽子同士を超高速でぶつけ、ビッグバン時のような高エネルギー状態を作り出し、超対称性粒子を検出しようとしているが、今のところ超対称性粒子は姿を現していない。

どんどん気が遠くなってくる…。


宇宙には星やガスなど目に見える物質に加え目に見えない暗黒物質が満ちている。物質には質量があり重力が働く。重力はものを引き止める方向に働く。
このことから宇宙の膨張は遅くなっていくのが自然だと考えられていた。
しかし事実は逆で、宇宙の膨張は加速している。
膨張を減速させる物質に逆らって何かが宇宙の膨張を加速させている。それを暗黒エネルギーと呼ぶ。その正体は、不明。